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最近の車がATではなくCVTが多い理由

従来のATと、CVTの違い

従来からあるトルコン式ATと、小型車に多いCVTはどこが違うのか。そこから始めたいと思います。

 


広義では、ATもCVTもオートマチックトランスミッションの仲間です。ここでは、従来からあるトルコン式ATをATと呼びます。


先ず、ATには、マニュアルと同じように、ギアがあります。
つまり、段数が決まっています。最初期の頃は、2速ATと言うようなものもありましたが、3速ATが主流となり、その後、オーバードライブを追加した4速ATの時代が長く続きました。


多段化の一番の理由は、燃費の向上です。
3速のままですと、高速走行時にエンジン回転数が上がり、
かなり燃費を悪くします。また、エンジン音が大きくなるというデメリットもあります。そこで、4速目をオーバードライブ化してエンジン回転数を下げて、燃費を向上させました。


ATはその後、どんどん多段化されて、現在では
8~9段も珍しくなく、ホンダも10段のATを発表しました。
では、CVTは、ATとどこが違うのか。


それは、CVTには「ギアがない」と言うことです。
CVTを無段変速などと表現することもあります。


ATのように、加速、減速に伴って、ギアが変わるということは
ありません。
では、どのように、速度に合わせて「変速」するのか。
それは、駒のような形をした動力伝達用のプーリーが
受け持ちます。


二枚一組のプーリーの幅を変えることで、変速します。
ATで言えば、発進のローギアから、高速のトップギアまで、
まさに、無段階で変速してゆきます。
ですから、ATのような変速ショックというものは
全く存在しません。


ドライブ用プーリーと、ドリブン用プーリーをつなぐのは
特殊な形状の金属ベルトです。


坂道の登り下りに例えると、ATは階段です。
いくら多段化しても、ある種の区切りが存在します。
それに対してCVTは、緩やかなスロープです。


そこには、段というものは存在しません。
登りでも、下りでも、常に滑らかに変化します。

 

CVTのメリットとデメリット

CVTのメリットは、なんといっても、理論上の
伝達効率のよさです。


特に、車のエンジンのように、効率よく力の出せる範囲(回転数)が決まっている場合には、とても有利です。


ATの場合、例えば発進の際、アクセルを踏むと
先ず1速で発進し、ある一定の回転数まで上昇すると、2速に
シフトアップします。そのとき、当然のようにエンジンの
回転数は下がります。車の種類にもよりますが、1速で
約4000回転/毎分まで回転が上昇してから、2速にシフトアップすると、3000回転/毎分程度まで下がるでしょう。


この、1000回転/毎分下がることが、エネルギーの無駄になります。
ガソリンの燃焼による熱エネルギーを使って、4000回転まで上昇した回転(運動)エネルギーは、フライホイールに蓄積されています。ところが、シフトアップ時に、回転数が下がるということは、せっかく蓄積した運動エネルギーを1000回転分捨てることに他なりません。


これは、ギアを使った変速の場合、避けて通れません。


それに対し、CVTでは、そのようなことが原理的に起こりません。


発進で、エンジン回転が4000回転まで上昇した場合、その回転数を維持しながら、プーリーによる無段変速によって、滑らかに、車速だけを上げることが可能です。


つまり、フライホイールにたまった運動エネルギーを捨てることなく、そのまま、車の車速上昇に使うことができるのです。このロスの少なさがCVTの最大のメリットです。


一度の変速におけるロスは、それほど多くなくても運転中、変速行為は無数に繰り返されます。
その蓄積が、燃費となって表れます。


では、デメリットは、どこにあるのでしょう。


それは、大きなエンジン(出力)に対応するのが難しいということです。前項で触れた通り、CVTの動力伝達には、金属ベルトを使用します。このベルトの強度を、ギアと同程度まで、強くすることがとても難しいのです。


そこで、軽自動車を中心とした、小型車に多く採用されているのです。ベルトの強度が十分であっても、大排気量、大トルクのクルマでCVTを使った場合、プーリーと金属ベルトの滑りを防ぐために、強い張力を要します。

 

そうすると、摩擦によるロスが増え、CVTのメリットが減ってきます。


以上のような理由から、比較的小排気量の小型車が中心となっています。


だた、スバルでは、300馬力でも十分に実用的なCVTを採用していますし、これからも、技術革新によって、より大きなエンジンにも耐えるCVTが出てくるかも知れません。

 

CVTが日本車に多い理由


CVTの技術は、圧倒的に日本のメーカーが進んでいます。


以前は、ヨーロッパ車にも、少し見られましたが、現在は
非常に少なくなっています。


一番の理由は、運転のフィーリングによるものでしょう。
エネルギーの効率的な利用(燃費)のことを考えれば、CVTはとても理想的なトランスミッションですが、
「速度に合わせてギアを選ぶのも運転の楽しみ」と考える人が
ヨーロッパには、多いようです。


エンジン回転数だけが上がって、後から車速がついてくるという感覚が、運転好きの多いヨーロッパのひとには、受け入れられていないようです。


また、アメリカ車では、まだまだ大排気量の車が多いというのが一番の理由でしょう。
日本では、車の燃費に対する意識が強く、燃費に有利なCVTの技術が、どんどん進化しました。

 


初期の頃は、ジャーナリストなども、そのフィーリングの悪さを酷評することも多かったようですが、日本のメーカーの技術者は、めげずに改良を重ね、現在では、普通に乗っていて違和感を感じるようなCVTは、皆無といっていいでしょう。

 

CVTの将来性はどうか

現在のところ、海外では、ATの多段化が進んでいます。


特にヨーロッパのメーカーを中心に、どんどん多段化されています。


しかし、ちょっと考えれば分かることですが、
ATの多段化と言うのは、ATがどんどんCVTに近づいているということに他なりません。

 


実際、現在でも9速ATのクルマなどは、
一定の回転数からほとんど変わらずに、ギアだけがどんどん変わってゆきます。
これは、CVTの走りそのものです。


変速も、運転の楽しみと言っていた、ヨーロッパのメーカーも
どんどん厳しくなる一方の燃費規制に対応するために
ATの多段化を進めています。


現在のところ、500馬力や600馬力の車に使用できる実用的なCVTは存在しません。しかし、素材や制御を含めた技術革新によってそれが可能になった場合、CVTがさらに多くの車に採用されてゆくのは間違いないと思います。


1987年、スバル・ジャスティによってはじめて実用的なCVTが誕生しました。(当時の名称はECVT)。


それから、30年の歳月が流れ、CVTは大幅な進歩を遂げました。


自動車にとって燃費性能は、ますます大切なものになってゆくでしょう。
基本的な原理として、エネルギーの効率的な使用が可能なCVTが、今後ますます発展してゆくのは間違いないと思います。